ワークシートを活用しながら「自分の素」探し

就職活動の「自分の素(もと)」探しが大切な理由

 一般的に、あなたが仕事を選ぶ時、あなた自身の「興味」・「価値観」・「能力」・「行動特性」の4つを満たすものやそれに近いものを選ぶことが出来れば、その仕事に対して満足感を得ることが出来ると言われています。

【価値観】
個人ごとの感じ方、考え方。
【行動特性】
個人ごとに特別に備わっている性質や特質。

 あなたは、この4つを含む様々な素材=「自分の素(もと)」が組み合わさって、 成り立っています。
 自分がどういう人間で、何が出来るのか、何が苦手なのか、どんな価値観を持っているのか、どんな行動パターンを持っているのかを説明できるようになるために、あなたを作っている「自分の素(もと)」について考えをまとめてみましょう。
 あなたしか知らないものもありますし、今まで一緒に仕事をしてきた人や家族・友人しか知らないこともありますから、「自分」のことを質問して「素(もと)」を集めることもあります。その材料集めである「自分の素(もと)」探しを行うことが、 就職活動の第一歩なのです。

 これからあなたが応募・面接を受ける企業は、どれだけその会社の仕事に対する心と身体の準備が出来ているかを確認してきます。求人応募をしている企業側の立場に立てば、誰でも採用するという訳にはいきません。
 たとえば、応募書類や面接時によく聞かれる質問として、
 「あなたの興味は何ですか?」
 「あなたの能力は何ですか?」
 「何故当社に応募したのですか?(志望動機)」
 「あなたの長所と短所は何ですか?」
 「何故、今の仕事を辞めるのですか?(退職理由)」
というものがありますが、なかなかうまく表現できないことが多いですよね?
 それぞれの質問に対する「正解」というものはありません。
 あなた自身の考えやそこから導かれる理由を、言葉にして伝えるものです。

 応募書類提出の締め切りに追われて文章に表現出来なかった時も、結果、不採用になったとしたら、きちんと伝えることが出来ていれば結果が違っていたかもしれないと思うことでしょう。そうならないためにも、自分自身の事について自分の言葉で表現できるようになっていないといけません。・・・就職活動を始める前には準備が必要です!

「自分の素(もと)」探しを助ける4つのワーク

 では、どうやって「自分の素(もと)」探しを始めればよいのでしょうか?
 そんなあなたにご紹介したい、便利な道具としてのワークがあります。このワークを進めていけば、就職活動に必要なあなたの「素(もと)」が揃うようになっていますので、これからそのワークについて説明をしていきます。

【行動の素(もと)】(長所と短所)

画像:自分の素・行動の素

目的

長所と短所の理解を深めるため。

・・・なぜ、面接官はあなたに「長所と短所」を質問してくるのでしょうか?
1)「どれだけあなたが自分自身の事を理解しているか?」
 あなたが自分自身を客観視できているかという確認のため。
2)短所について「自分で気づいているか?」
 その上で「会社が短所をフォローしなくてはいけない」更に、
 「ある程度あなたに任せておいても自己解決できそうなのか」を確認するため。

ワークの進め方

  1. 単語であなたの長所と短所を表してみましょう。1つか2つ出てくれば十分です。
  2. 長所には「具体的エピソード」を紐付けます。
  3. 短所には「改善策・解決策(これからどのように直していくか)」を紐付けます。

サンプルワークの説明

 この人の長所は、「明るく社交的(と言われること)」と「素直」です。これを、エピソードを紐付けるとぐっと説得力が増します。

「私の長所は、明るく社交的である(と言われる)事と、素直であるということです。具体的には、どのアルバイト先でも、笑顔でハキハキと大きな声で話すことを心がけていたところ、お客様や仕事のメンバーから感じが良いと高評価をいただくことが出来ました。また、仕事でも交友関係でも、分からない事は分からないと伝えて教えを求めることが出来、自分にミスや間違いがあった時にはきちんと謝罪することが出来るため、素直な性格だと言われる事が多いです。」

 どうでしょうか? エピソードを入れることで説得力が増しています。

 さて、この方の短所は、「早とちりが多い」と「失敗を引きずりやすい」です。短所については、エピソードを付けるのではなく、改善策や解決策を紐付けます。

「私の短所は、早とちりしてしまうことがある事と、失敗を気にしてしまうことがあるという事です。だからこそ仕事上では、早とちりしてミスを重ねないように、初めて経験することの前には自分なりにやり方をイメージしたり先輩に確認するなど、情報収集をしてから臨むことを心がけようと思います。また、一度失敗してしまったことに関しては、他の方の知恵やアドバイスをお借りしながら、出来るだけ早く失敗して原因を明確にした上で、同じ失敗を繰り返さぬためには何が必要かという対策を立てて、次につなげるよう心がけたいと思います。」

 短所を単語だけの表現で止めてしまう(私の短所は●●です。)と、面接官も「大丈夫かな?」と不安になってしまいます。上の文章のように、短所の後に改善策や解決策を紐付けることによって、面接官の印象も、「この人は、自分の短所を理解した上で、自身で仕事に支障を出さないように気をつけることが出来そうだ。」という風に悪くないものに変化します。

【明日の素(もと)】 (今までの生活を思い出して、明日の自分を知る)

画像:自分の素・明日の素

目的

 書きながら思い出したエピソードが、長所や短所の起源だった事を発見できたり、得意なことや苦手な事を改めて思い出すため。
「思い出深い事・転機になった事・影響を受けた出来事や物」「好きになった人や物」は、今のあなたの価値観を作る素(もと)になっている事も多いので、じっくりと思い出してみるとよいでしょう。

ワークの進め方

 それぞれの時代を6つの項目でまとめながら、今までの自分を振り返ります。

  1. 「この時代を一言で表すと?」
  2. 「得意だった事・夢中になった事・楽しかった事・うれしかった事」
  3. 「ほめられた事・頑張った事」
  4. 「怒った事・嫌だった事・うまくいかなかった事」
  5. 「思い出深い事・転機になった事・影響を受けた出来事や物」
  6. 「好きになった人や物」
  7. 今までの人生の流れをHappyウェーブ(幸せの波)で視覚的に捉えます

サンプルワークの説明

Happyウェーブ:全体の流れを見ながら深めてみましょう。

幼少期は、まずまずからスタートしています。

小学校に入学して、一度ウェーブが下がってからまた上がっています。内容から推測すると、 小学2年生の時の転校が影響していて、新しい環境が良いウェーブを生み出したように見えます。

中学に入ると、ウェーブは低い状態が続いていますね。内容を見てみると、好きではない勉強をしながらも、 努力の成果が出てよい成績を取れたし、受験にも成功したとあります。それでもこの方がウェーブを低く書いているところに、この方の価値観が見えます。もしかすると、この人にとっては、良い成績を取ることよりも、もっと友達づきあいなどを充実させる事の方が大切なのかもしれません。

高校に入ると、一気にウェーブが上昇していて、高校時代全般で高いウェーブを保っています。 内容を見てみると、中学時代に出来なかった友達づきあいを思いっきり満喫して、好きな事にもチャレンジしながら、進学の決断もスムーズにできて、受験の時期には頭を切り替えて勉強に集中できた様子です。友達の大切さを学んで実践された時期だったようですし、恐らくその経験が、今のこの方の価値観に結びついているのではないかと思われます。

大学に入学してからウェーブにも大きな動きが見られます。期待していた大学生活とは裏腹に、 自分自身も含めて大学生がだらしなく思えたようです。その中で、大学の外(アルバイトとその先輩)に光を見出していた様子が伺えます。また、3年次に大学を辞める決断をします、その時のウェーブが一番低い位置になっているようです。恐らく、3年次というのは、就職活動を意識して始める時期でもありますので、その時に将来について思い悩むことがあったのではないかと思われます。

その後、将来への不安を抱えながらも、アルバイトをしながら運転免許の取得をして、現在に至っています。 Happyウェーブは、一番低い時よりは上昇していますが、まだ中間地点より低い位置にあるようですが、これからの就職活動を通じて上昇させたいという気持ちが見えてきそうな形で終わっていますね。

【能力の素(もと)】(今までの仕事の経験をまとめよう)

画像:自分の素・能力の素

目的

 ここで書き出した内容は、正社員応募では必ずと言ってよい程提出が求められる「職務経歴書」を作る際に、とても必要な情報をまとめるためです。

ワークの進め方

 勤務先毎に、具体的なエピソードで思い出しながら書き出してみましょう。

  1. 「仕事の内容」
    ポイント:
     <1日の流れ><1週間の流れ><1カ月の流れ>
     できるだけ細かく分けて考えてみることです。
     多くの時間を割いて行っていた仕事は何でしょうか?
     週に1回、月に1回の割合で行う仕事があったかもしれませんよね?
     他の人のお仕事を手伝っていたことはありませんか?
     その仕事をするために、何を使って、どのように行っていましたか?
  2. 「楽しかったこと」
    どういう時にやりがいを感じるのかがわかります。
  3. 「辛かったこと」
    乗り越えたい・マスターしたいと考える課題として書き出されています。
    また、次のお仕事でどんなことを避けたいと考えているのかもわかります。
  4. 「ほめられた事や心がけていたこと」
    仕事として取り組んだ結果についてまとめられます。
     どういった事が得意なのか?
     どういう点が周囲から評価されたのか?
    この内容は同じような就業環境ではもちろん、次に目指している別のお仕事を行う上でも必要な能力につながっています。
    些細で書くほどのことではないなんて言わずに、とにかく書き出してみましょう。
    当たり前の事を当たり前に出来るということが重要なのです!
  5. 「学んだことや身につけたこと」
     その仕事を経験するまでは、それが難しい・大変だとも考えていなかったが、実際に経験をしたからこその大切さに気付くことが出来たという、新たな発見を表しています。
     「楽しかったこと」、「辛かったこと」、「ほめられたことや心がけていたこと」を踏まえて、その仕事を通じて何が出来るようになったか・何が大切だと気付くことが出来たのかについて考えてみましょう。
     ここで書き出した内容は、面接の時によく聞かれる、「あなたはその仕事で何を得ましたか?」という質問に答えるための素(もと)になります

【興味の素(もと)】(やりたいこととやりたくないこと)

画像:自分の素・興味の素

目的

 仕事を選ぶ上で何を大切にしたいのか(優先順位)について考えていく。

ワークの進め方

 左側から右側に書き進めていきます。

  1. 「好きなこと・興味のあるもの・好きな場所等」「嫌いなこと・嫌いな場所」
     特に仕事を意識せずに、ざっくばらんに並べてみましょう。視点を仕事から、ふとはずした瞬間に、不思議と新たな選択肢が浮かんでくることもあります。
  2. 「就職するにあたって大事にしたい条件」「気にならない(譲れる条件)」
     あれもこれもと大切な条件な気がしてくるかもしれません。
     譲れない条件がたくさんある方は、その中で「優先順位」を付けてみると良いでしょう。
     時間と物理的・精神的余裕を考慮に入れた上で、何か譲れる条件はないのかについて考えてみたり、期間や期限を区切って条件を緩和していくという方法もあります。現実では、良い条件をすべて満たすものは数が少なく、また理想的な条件の仕事があったとしたら、競争率が高いことが多いよう です。
  3. 「得意なこと」と「苦手なこと」
     仕事以外の日常生活の中や学生時代で感じていたことまで広げて考えてみましょう。
  4. 「やりたいことのヒント」と「やりたくないこと」
     左から順に書き出してきた内容を総合して、それを満たす仕事内容(職種)をあぶりだす作業です。求人情報に日ごろから目を通していくことで、自分でも職種の知識を広げていくことが可能ですが、この欄は書き出せない人も多い欄です。

 自分で書いたものを今一度眺め直してみると、色々なことが見えてきますよ。
 たとえば、視点を、「やりたい/やりたくない」と「出来る/出来ない」という組み合わせで考えてみましょう。

  やりたい やりたくない
出来る
理想的
出来ない ×

 「やりたいけど出来ない仕事」については、それをどう捉えていくかが非常に難しいですね・・・。
 本当に「出来ない」のか、それともステップアップしていける可能性があるのか?
 一概にこうだという答えも導き出しづらい時があります。つまり、企業の考え方次第ということもありうるのです。同じようなお仕事内容でも、ある会社では、「絶対に経験者しか採用しない」と考えている場合もありますし、
 ある会社では「未経験でもやる気があれば良い!あとは育てたい」と考える場合もあるでしょう。悩んだら、「(ダメもとで)ひとまず応募してみる」という視点と勇気を持つことも必要なのです!

こんな方はいませんか?

自分自身の経験を振り返って言葉で評価するという事は、「客観視」と「語彙能力」が必要です。語彙能力とは、自分が読めたり、書けたり、伝えたりすることができる言葉のことです。
さらに、職種の情報とその職種に必要とされる職業能力が結びついていない場合には、
就職支援センターの相談員と一緒に、新たな視点を加えながら内容を深めていく「自分の素(もと)」探しをおすすめします!

ワークを元に、応募書類を作ってみよう!

 4つの素(もと)を使って、応募書類を作ってみましょう。
 既に書ける材料は揃っているのです。あとは、ワークを見直しながら、文章を組み立てていくだけです。サンプルのワークを題材に、履歴書と職務経歴書の見本を載せています。4つのワークが反映された「履歴書のサンプル」と「職務経歴書のサンプル」を参考にしてください。

【履歴書のサンプル】(WORDファイルダウンロード 70KB):JIS規格の履歴書使用


ポイント

  • 手書きの履歴書を求める企業が多いです。丁寧に気持ちを込めて書きましょう。
  • 面接官に理解してもらうための「あなたの素(もと)」を漏らさず盛り込みましょう。
  • 特に「職歴欄(アルバイト経験を書いてもOK)」と「志望動機欄」は、 ワークシートからあぶりだしたあなたの大切な「素(もと)」をキーワード的に盛り込むよう、工夫しましょう。

【職務経歴書のサンプル】(WORDファイルダウンロード 38KB):Word使用

ポイント

  • 書く内容が多い職務経歴書は、手書きよりもパソコンで作る方が一般的です。
  • それぞれの会社毎に分けるなど、視覚的にも見る人(面接官)にとって見やすいものを心掛けましょう。
  • 単に「職務経験の詳細」を書くだけではなく、その仕事に対してあなたがどのような姿勢で臨んだのか等、 人柄までも伝えるように、「心掛けた点」などの項目も加えたいものです。